障害者郵便の低料金制度、博報堂がDMに使う
石川の通販会社に委託

 印刷・通販会社「ウイルコ」(石川県白山市)が、障害者団体の定期刊行物郵送に適用される郵便料金割引制度「低料第3種郵便物」を利用してダイレクトメール(DM)広告を送っていた問題で、大手広告会社「博報堂」(東京都)がウイルコに委託した家電量販店のDM広告も、この制度を使って低料金で発送していたことがわかった。

 ウイルコ博報堂によると、広告は障害者団体の会報を入れた封筒の内側に印刷。2005年8月から今年2月にかけて半年に1度ずつ、計1100万通が顧客向けに郵送された。

 障害者団体を対象とした低料第3種郵便物は、月3回以上発行する定期刊行物で、定形外の場合、通常50グラムまで120円の郵便料金が8円となる。郵便事業会社(日本郵便)の承認が必要で、8割以上が有償の購読者であることが条件。

 博報堂広報部は「ウイルコから制度的に問題ないと提案され、そのまま任せてしまった。制度の確認が不十分で本来の趣旨とは異なる使い方をしてしまった。悪用の意図はなかった」と説明。

 ウイルコ経営企画部は「低料第3種郵便物を利用した受注業務は大阪市の広告会社から持ちかけられた。ほかにもあり、内部調査を進めている」と話した。
(2008年11月9日 読売新聞)

博報堂も障害者郵便悪用 家電店に提案、1100万通
http://www.asahi.com/national/update/1108/TKY200811070406.html

 大手企業などが障害者団体向けの「低料第3種郵便物」制度を悪用してダイレクトメール(DM)広告を格安で郵送していた問題で、大手広告会社「博報堂」(東京)が大手家電量販店(東証1部)にこの手法を使うよう持ちかけ、約1100万通のDM広告を量販店から受注していたことが朝日新聞の取材で分かった。博報堂は、実際の業務は大手印刷・通販会社「ウイルコ」(石川県白山市東証2部)に再委託し、「管理進行料」などとしてマージンを得ていた。

 正規の郵送料との差額として少なくとも約4億4千万円を浮かせたことになる。大手家電量販店は「博報堂から『安くDMが郵送できます』『制度を使うことには何の問題もありません』と説明されたので信じた」としており、結果的に、博報堂の関与が他社のコンプライアンス(法令順守)を甘くし、制度の悪用を広めた形だ。家電量販店は「意図せざることとはいえ、制度本来の趣旨をゆがめることになり認識の甘さを痛感する」としている。

 これに対し、博報堂は「ウイルコから『制度を使うことに問題はない』と提案されて採用した。福祉制度を意図的に利用しようとしたものではないが、結果として制度の趣旨を逸脱することとなり認識が甘かった」と釈明。しかし、マージンの額については「答えられない」としている。

 家電量販店と博報堂の説明によると、家電量販店は05年8月から今年2月にかけて、半年ごとに、過去に購入実績のある顧客あてに計1100万通のDM広告を「低料第3種郵便物」の制度を使って送った。

 低料第3種の制度は、障害者団体が発行する刊行物を郵送するためのもので、郵便法などにより、刊行物の8割以上が購読されていることが適用の条件。しかし、家電量販店によると、今回はすべてが事実上のDM広告で、郵送先は量販店の顧客だった。

 低料第3種をめぐっては、これまでの朝日新聞の調べで、05年以降に全国で少なくとも約1500万通のDM広告の発送に用いられ、不正に免れた郵便料金が少なくとも6億円を超えることが判明したが、今回判明した分を加えると計2600万通にのぼり、正規の郵便料金との差額は少なく見積もっても10億円を超えることになる。

 一方、実態調査を始めた郵便事業会社(JP日本郵便)は、すでに制度利用の承認条件を満たしていないことが明らかになったとして1団体の承認を取り消すなどして、さらに調査を進めている。(上沢博之)