■ イラン核問題
(2/12)米、外交交渉失敗時にイラン核施設攻撃計画を立案・英紙
 【ロンドン12日共同】12日付英紙サンデー・テレグラフは、米国がイランの核兵器保有を防ぐため、同国の核関連施設への軍事攻撃に向けて準備を進めていると報じた。外交交渉が失敗した場合に備えた“最後の手段”として、国防総省空爆を中心とした具体的な計画を立案しているという。

 同紙によると、国防総省の専門家が攻撃対象や使用兵器、後方支援作戦などを検討中で、ラムズフェルド国防長官にも報告された。同省高官は「この数カ月間、非常な緊急性を持って準備が進んだ」と指摘した。

 最も考えられる戦略の1つは、地下施設破壊を目的とした特殊貫通弾(バンカーバスター)も登載するB2ステルス爆撃機による攻撃。空中給油機とともに米ミズーリ州の基地を出発した爆撃機がイラン上空を目指す。開発が間に合えば、潜水艦から通常型弾道ミサイルが発射される可能性もある。

 米政府はイラン核問題について外交手段による解決を目指すとしているが、ブッシュ大統領は軍事行動を解決のための手段から排除することを拒否、イランの核兵器保有への野心はいずれ許容できなくなると述べたという。

核開発転用可能な測定機、無許可輸出か メーカー捜索へ
2006年02月12日06時11分

 核開発に転用可能な3次元測定機を、無許可で輸出していた疑いが強まったとして、警視庁公安部は週明けにも、川崎市の精密機器メーカーやその工場を外為法違反(無許可輸出)などの疑いで家宅捜索する。2年前に国際原子力機関IAEA)が実施したリビアへの核査察で、同社がマレーシアの企業に輸出した同社製の3次元測定機が見つかっている。今回の輸出は別の国への不正輸出容疑だが、「核の闇市場」とかかわり、大量破壊兵器開発の懸念国であるリビアへの流出経緯も視野に捜査を進める方針だ。

 03年末から04年初めのIAEAによる査察で、リビアの核関連施設から見つかったのは、3次元測定機など精密測定機器3台。測定機にはられていたプレートのメーカー名や製造番号などから、川崎市にあるこの精密機器メーカー製であることが判明した。警視庁が調べたところ、同じ時期に、同じ工場でつくられた3次元測定機を別の国に不正に輸出していた疑いが浮上した。

 調べでは、精密機器メーカーは01年ごろ、外為法などで定められた経済産業省の許可を取らずに、アジアの2カ国にある日本企業の現地法人に、3次元測定機2台と測定機を動かすソフトウエアを輸出した疑い。警視庁が測定機を鑑定するなどした結果、輸出貿易管理令などで定めた輸出規制リストの対象となる水準の性能だったことが判明した。

 3次元測定機はセンサーが対象物に触れた地点を3次元で解析することで、立体的で精密な測定ができる装置。核兵器の開発などには不可欠で、一定の水準を超えた測定機は輸出規制の対象となる。

 このメーカーは1934年の創立で、総合精密測定機器メーカーとしては国内最大手。民間信用調査会社によると、3次元測定機などの各種測定機器のほか、測定工具類の2分野が売り上げの中心を占め、海外向け売上高が6割前後(連結ベース)とされる。

 同社幹部は以前の朝日新聞の取材に対し、「(外為法に触れないよう)性能が低い測定機を輸出している」と話していた。

ヤマハ発動機決算会見
2006年02月08日


記者会見に臨む梶川社長(左)と菅沼幸雄取締役=東京都内で

 7日に東京都内であったヤマハ発動機の決算発表。ヘリ不正輸出事件発覚後、初めて記者会見に臨んだ梶川隆社長は、冒頭から「世間をお騒がせした」などとして頭を下げる一方、「(事件については)捜査が続いており、お答えできない」と予防線を張った。家宅捜索当日、「法律に触れる行為をした認識は全くない」と捜査と真っ向から対立する見解を示した後、突然、口をつぐんでしまった同社。その後、様々な疑いが捜査や報道で指摘されたが、「捜査協力」を盾に反論も説明もしようとしない姿勢に批判が強まりそうだ。(福田直之)


 二輪車、船外機事業などが好調だったことから、05年12月期決算の発表は、社長にとって鼻高々の会見になるはずだった。報道陣ら100人以上が詰めかけた。


 社長から決算の説明が15分ほど続いた後、輸出管理態勢のことを皮切りに、記者から事件についての質問が相次いだ。


 「最初の会見で、違法性はないとしたが、その認識は変わったか」と問われると「どんな対応をするかが十分検討できていない時点で、当社の立場を述べたほうがいいと(違法性がないという発言を)行った。その後、捜査に全面的に協力するとした以上、捜査に支障をきたすようなコメントは避けたい」と答えた。


 当初の見解が変わったか確認する質問に「それを含めて捜査対象なのでコメントは控える」と繰り返した。


 会見後、大勢の報道陣に囲まれた社長。「お逃げになるのですか」と記者から声が響く中で「逃げません」と言いながら、記者をかき分けて会見場から出て行った。


 外為法違反容疑で家宅捜索を受けた1月23日の記者会見で、大坪豊生取締役(広報担当)は「違法性の認識はない」と説明。25日には長谷川至会長も「違法と思ったらやらない。当局は不正と言っているが、我々は不正でないと思っている」と述べ、会見の見解を改めて強調した。


 ところが、調べが進むにつれ、社員が違法性を認め、説明以外の中国企業にヘリを輸出していたことなど、会社の説明と矛盾する内容が次々と指摘された。


 どちらの主張が真実か――会社からの説明がない株主の間にも動揺と不満が広がっている。中には「どうしてくれるんだ」と、捜査側に苦情を言いに来た県内の株主もいたという。


 複数の企業で広報を勤めるあるベテラン広報マンは「企業広報の鉄則は、(疑問への)クイックレスポンス(素早い返答)と、うそをつかないことだ」という。資料は押収されているから、事実確認に時間はかかるとしても、事実誤認を正すなり反論するなりする義務がヤマハ発動機にはあるといえる。このままでは、株主や国民からの同社に対する不信感が大きくなるばかりだ。


 静岡文化芸術大の坂本光司教授(経営学)は「捜査を受けた状況下で難しいところだ」としつつ、「株主をはじめ利害関係者がいるのだから、可能な限り事実は事実として説明してよいのではないかと思う」と話している。



◆「開示控えるのが協力」/浜松でも会見


 ヤマハ発動機は、浜松市の浜松商工会議所でも戸上常司・代表取締役専務(59)ら3人が会見した。決算の概要を話す前に「捜査を受け、関係各位に多大なご迷惑をかけていることを深くおわび致します」と謝罪した。「一部指摘のように、弊社が本件に関し一切の説明を拒んでいるわけではない」とする一方で、「捜査に全面的に協力するのが私どもの務め。本件について会見を開く形で捜査にかかわる情報を開示するのは控えるのが全面協力」と話した。


 最初の会見で無人ヘリを9機輸出したなどと発表したことについて、戸上専務は「強制捜査を受けて混乱している中、その時点で理解できていた内容を報告した」として、会見内容が正しかったかどうかについて明言を避けた。「違法性の認識はなかった」としていた点についても「捜査を受けて事実確認に努めたが、万全なものではない。どちらともお答えできない」と言葉を濁した。


 現在、同社役員ら6人による危機管理委員会(委員長・宮尾博保常務)が、事実関係の把握、管理体制の検証を進めているという。


 また無人ヘリを輸出していたスカイ事業部の売り上げは、農薬散布用を中心に05年12月期で約30億円、営業利益は約8億円で「売り上げ的には社内で一番小さな事業部」とした。(曽田幹東)