「この体 想像できるか」
水俣病患者らチッソ本社へ
「時効・除斥」の撤回要請

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 水俣病被害者の早期救済を求めるノーモア・ミナマタ国賠等訴訟原告団水俣病不知火患者会の代表らは三日、チッソ東京本社を訪れ、同訴訟で突然同社が持ち出した「時効・除斥」の主張を撤回し、水俣病患者の全面救済をするよう要請しました。

 同社側は訴訟の準備書面で、「時効の成立と除斥期間の経過による請求権の消滅」を主張し、原告の請求を棄却するよう求めました。

 大石利生・原告団長はじめ原告ら約五十人は、同本社前で集会を開いたあと、チッソの石田紀生専務に「時効の主張は熊本地裁で退けられ確定している」と撤回を求める抗議文を提出。大石原告団長は「はじめてチッソ幹部に訴えを聞いてもらうが、痛さや味がわからない体がどういうことか想像できるのか。きれいな海をけがしておいて、五十年もたった今も被害者が出ている。時効といういいのがれはできない」と怒りをぶつけました。

 患者会の甘利宇洲根さんら原告は「(手が震えて)年賀状がきても返事が書けない。文字が奪われ、生活が奪われた。許せません」などと涙声で訴えました。

 原告らは、時効の主張は「原因企業としての責任を自覚していない証しでもあり、水俣病患者を乱暴・一律に切り捨てる暴論」と同社の姿勢を批判。「一日も楽に暮らせたと思ったことがない。あのきれいだった海を戻して、加害企業としての責任を果たしてほしい」とみずからの病状を訴え、早期の全面解決を迫りました。

 同社の石田専務は、「時効・除斥」の主張が地元で大問題になっていることを理解し、一日も早い解決をめざすと表明しました。

タミフル:東大教授の研究室が製薬会社から寄付金
 インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用と死亡例の因果関係を検証した厚生労働省調査会に参考人として出席した五十嵐隆・東京大教授の研究室が、輸入販売元の中外製薬から奨学寄付金として計300万円を受け取っていたことが分かった。調査会は昨年1月、「現時点で安全性に重大な懸念があると考えていない」との結論をまとめていた。五十嵐教授は「寄付金は全く意識せず、提出されたデータから因果関係があるとは言えないと発言した。何ら問題はないと思う」と話している。

 当時の調査会には委員4人のほか、参考人として五十嵐教授ら6人が出席した。厚労省タミフルの副作用を検証するため4日に開く調査会の新たなメンバーについては、中外製薬から寄付金を受け取っていたり、治験に関係している人物を外す方針を決めている。約30人の候補者のうち、五十嵐教授ら数人が対象となる。

 五十嵐教授によると、中外製薬からの寄付金は01年度から06年度まで、毎年50万円ずつで計300万円という。厚労省医薬食品局は「当時は現在のルールはなく、信頼性に問題はないと考えている」と話している。【玉木達也】

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毎日新聞 2007年4月4日 3時00分

タミフル厚労省や研究班へ批判の声 資金流用
 インフルエンザ治療薬「タミフル」の副作用を調査する研究費に、輸入販売元の中外製薬の資金が使われていたことが30日分かり、被害者からは厚生労働省や研究班への批判の声が上がった。一方、この日会見した研究班のメンバーは、寄付について厚労省に報告し、承認を得て進めていたにもかかわらず、研究班から突然外されたことに不信感を募らせた。

 会見した厚労省医薬食品局の中澤一隆総務課長は、中外製薬から研究資金が渡っていた3人を研究班から外したことについて「社会的な関心が高く、李下(りか)に冠を正さずだ。心苦しいが、やめてもらうことにした」と説明した。しかし、資金流用を厚労省の担当者が黙認していたことには「不信を招くもので問題だった」と謝罪したものの、言葉少なだった。

 一方、研究班の横田俊平・横浜市立大教授と藤田利治・統計数理研究所教授も記者会見。冒頭、「一企業からの寄付金は好ましくなく、重要な調査に無用な誤解を与えた。責任を痛感しており、遺憾に思う」と謝罪したが、「厚労省が研究の必要性を認めながら、費用を調達できなかったことが原因で、研究班を辞めなければいけない理由はない」と話し、同省の対応を厳しく批判した。

 さらに中外製薬も会見し、藤田晴隆専務らによると、同社は今回の寄付について厚労省に相談したという。その際、同省安全対策課は「研究費拠出を所轄しているのはうち(安全対策課)である。所轄部門に伝えたということになるのではないでしょうか」と反対しなかったため、了解を得たと理解したという。

 服用後に異常行動を取り、死亡するなどした子どもを持つ親らでつくる「薬害タミフル脳症被害者の会」の軒端晴彦代表(49)=岐阜県下呂市=は、「国民の健康を守る立場にあるはずの厚生労働省のボロが、次から次へと出てくる。あきれたとしか言いようがない」と怒りをあらわにした。

 同省研究班の調査費用が、まさにタミフルの輸入販売会社から出ていたという「異常事態」に、軒端代表は「そんな研究の結果は、科学的な根拠に基づくものと言えない。正確な結果が出るまで、服用を全面中止にすべきだ」と厳しい見方を示した。また、研究班員の交代については「医学界には派閥があり、同派閥の研究者に代わるのでは意味がない。全くクリーンな専門家に調査してもらいたい」と話した。【玉木達也、北川仁士、加藤隆寛】

毎日新聞 2007年3月30日 22時10分 (最終更新時間 3月31日 0時13分)