軍需

三菱重工ミサイル開発ミス でたらめ数値『適正』と報告
 三菱重工業(本社・東京)による88式地対艦ミサイルの改良型「SSM1改」の開発ミス問題で、いいかげんな設計図を基に治具(じぐ)と呼ばれる金属製の器具を使って強度試験を行った結果、得られたデータがでたらめだったことが十二日、分かった。この数字を基に防衛庁には「問題なし」と報告していた。
 SSM1改の開発は二〇〇一年度から六年間の予定で始まった。担当した同社名古屋誘導推進システム製作所(名誘、愛知県小牧市)は、昨年十月の発射試験を前に同社名古屋航空宇宙システム製作所(名航、名古屋市)に強度試験を委託した。
 強度試験は飛行時にかかる荷重を再現するため治具で天井と床からミサイル本体を支え、さまざまな圧力をかけてひずみを測定するが、ここから異常な事態が連続する。
 まず、治具の設計者はミサイル後部の噴射口に治具をかける部位がないことを理由に荷重ポイントを一カ所、割愛した。荷重試験の結果は当然ながらおかしな数値となり、適正な試験なら数値をつなぐとグラフは「谷形」となるはずなのに「山形」になってしまった。
 ところが、名航ではこの数値を基に「ひずみはなく適正」との報告書をまとめ、これを受け取った名誘は「問題ない」と判断して、防衛庁技術研究本部に提出した。
 二重三重のでたらめぶりに防衛庁開発計画課は先月、三菱側から事情聴取した。
 略 同課では「開発を甘くみているとしかいいようがない。数値をねつ造したのではないかとも疑ったが、三菱側は否定した。防衛庁に捜査権はなく、これ以上は調べられない」と言う。
 三菱重工業広報IR部は「だます意図はなかった。考えられないミスが続いたまで。何と非難されても返す言葉がない」と話す。防衛庁はこんな武器開発に、百三十九億円の巨費を投じようとしている。tokyo