三菱UFJ 基本ができていない
2007年6月13日

 三菱東京UFJ銀行がまた、金融庁から処分を受けた。相次ぐ不祥事は法令順守や内部管理体制が十分でない点に根本的な原因がある。トップをはじめ経営幹部は責任を明確に示す必要がある。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の銀行や証券会社に対する処分は、米監督当局が昨年十二月に「資金洗浄の監視体制が不十分」として、同行に業務改善命令を出したのを皮切りに、半年で五件に上る。「三菱」の名が泣く、異常な事態というべきだ。

 今回の業務改善命令は二件ある。投資信託の販売と海外業務に関する不祥事だ。投信販売では、顧客の注文を忘れて売買をしなかったり、誤発注で顧客が損失を被った事例が三年間で九十九件に上った。

 銀行側のミスで損失が発生したなら、補てんするのは当然だが、担当者は自分の勤務評価が下がるのを恐れて、謝罪だけで済ませていたという。これは法令うんぬんよりも、社会常識の問題だろう。そんな取り扱いがまかり通るようでは、顧客はとても安心して取引できない。

 背景には、過熱する投信販売競争がある。銀行は企業への融資だけでは収益が上がらなくなり、各種手数料収入の増加に血道を上げている。低金利が続く中で、投信販売手数料は重要な収入源だった。第一線の行員は販売成績にこだわるあまり、間違いを起こした際の基本的対応がおろそかになったのではないか。

 海外業務では、現地採用行員の横領や不正な資金引き出しが過去三年間で数十件に上った。中国では、行員が公安当局に収賄の疑いで逮捕される事態も起きている。

 いずれも、件数の多さからみて行員の資質の問題というよりも、経営管理体制の不備とみるべきだ。金融庁は、二〇〇四年にも米国子会社が米監督当局から資金洗浄防止体制の欠陥で業務改善命令を受けていたのに、その後も適切な措置を講じてこなかった点を指摘している。経営責任は重い。

 畔柳信雄頭取は「再発防止策をしっかり現場で実施する」と述べているが、頭を下げただけで信頼を取り戻すのは難しい。この際、抜本的な改善を図るために、経営体制の一新も視野に入れるべきではないか。

 他の銀行も、こうした不祥事を「対岸の火事」と眺めてはいられない。銀行が扱う金融商品は増えている。窓口の第一線で、投信に限らず顧客への商品説明は十分か。トラブルになりそうな場合は、適切に対応できているか。あらためて、しっかりと点検してほしい。