NHK株不正 放送直前の購入記録 否認の在京記者も

2008年01月19日16時03分

 NHKの記者ら3人が放送前の特ダネ原稿で得た情報をもとに株を購入したとされるインサイダー取引疑惑で、3人とも、原稿が局内の端末で閲覧できるようになった放送前の22分間に株を購入した記録が残っていることが、関係者の話でわかった。3人のうち在京の報道局テレビニュース部制作記者(33)は容疑を否認しているが、証券取引等監視委員会はこの記録を重視しており、証券取引法(現・金融商品取引法)違反(インサイダー取引)の疑いが強いとみている。

 調べでは、3人は07年3月8日の午後3時のNHKニュースで、外食大手ゼンショー(東京都港区)が回転ずしチェーンのカッパ・クリエイトさいたま市大宮区)をグループ化するとの特ダネを放送する前の22分間に、閲覧した原稿をもとにカッパ社の株を購入したとされる。

 監視委の調べに対し、3人のうち岐阜放送局放送部記者(30)と水戸放送局放送部ディレクター(40)は容疑を大筋で認めているが、制作記者は「そんな原稿は見ていない」などと否認しているという。

 関係者によると、原稿は原稿システム端末上で「外食問題」と題され、3月8日午後3時の全国ニュースのトップ項目として表示されていた。午後2時前に端末に登録されたが、4けたの英字か数字によるパスワードでロックし、筆者とデスク以外は見られないようになっていたという。

 同日午後2時半ごろ、執筆したNHKの経済部記者がゼンショーに事実関係を確認。原稿は午後2時38分にロックが解除され、アクセス権限のある職員約5000人が閲覧できるようになった。

 3人はいずれもアクセス権限があり、株を購入した記録も午後2時38分から取引が終了する午後3時までの間に残っていたという。

 一方で監視委は、容疑を大筋で認めている2人のうち1人が、特ダネ原稿を閲覧できるようになる10分ほど前にもカッパ社の株を買ったことを確認しており、3人が特ダネ原稿の情報を知り得たとされる経緯について詳しく調べている。

NHK記者ら特ダネ悪用 3人が株売買 監視委が調査

2008年01月18日02時10分

 職員による株の不適正取引問題で、NHKは17日、報道局記者ら3人が証券取引法(現・金融商品取引法)違反(インサイダー取引)の疑いで、証券取引等監視委員会の調査を受けていることを明らかにした。3人は、NHKが特ダネとして報じた企業の資本業務提携の情報を、原稿システム端末などを通して放送前に知り、提携する企業の株を買ったとされる。3人は売り抜けて利益を得ており、NHKは内部で調査委員会を設け、処分を検討しているという。

 NHKによると、3人は報道局テレビニュース部制作記者(33)=96年入局=と、岐阜放送局放送部記者(30)=03年入局=、水戸放送局放送部ディレクター(40)=92年入局。うち2人は、端末などで原稿を見てから株を買ったことを認めているが、1人は「そんな原稿は見ていない。値動きを見て、何かあると思って購入した」と否認しているという。

 3人は07年3月8日、牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショー(東京都港区)が、回転ずしチェーン「かっぱ寿司」などを展開するカッパ・クリエイトさいたま市大宮区、いずれも東証1部上場)と資本業務提携を結んでグループ化するとのニュースが放送される直前に、カッパ社の株をそれぞれネット取引で約1千〜3千株購入。翌日に売り抜け、10万〜40万円程度の利益を得たという。

 カッパ社とゼンショーとの資本業務提携は、NHKが3月8日午後3時のニュースで放送し、15分後に発表された。この日の終値で1720円だったカッパ社の株価は、発表後の翌日は一時1890円の高値をつけた。

 NHKによると、3人は取材などに関与しておらず、業務上のつながりもなく、連絡は取り合っていないという。16日から監視委の任意の調査を受け、業務を離れて自宅待機中という。

 NHKでは、「取材で知り得たことを個人のために利用してはならない」とのガイドラインはあるが、株取引を規制する明文規定はないという。報道局の経済部記者については、家族も含めて株取引をやめるよう部内の会議などで口頭で注意しているが、3人は対象ではなかったという。

 会見で橋本元一会長は「報道機関として根幹に触れる問題。大変申し訳ない」と謝罪した。

 監視委は、悪質性や利益の額などに応じて、金融庁への課徴金納付命令勧告や、検察への刑事告発などを検討するとみられる。