【経済】
トヨタカイゼン」に全額残業代 過労死認定受け来月から

2008年5月22日 13時05分

 トヨタ自動車は、職場改善などを目的に現場従業員が通常業務の時間外に取り組む「QCサークル活動」について、これまで一部のみ認めていた残業代を6月から全額支給することを決めた。労働組合の了解も得ており、従来は自主的活動ととらえていたQCを明確に業務と認定する。QCはトヨタの代名詞になっている「カイゼン」運動の柱。

 QCをめぐっては、トヨタの元社員の過労死を認めた昨年11月の名古屋地裁判決が「事業活動に直接役立つ性質」として業務と認定。サービス残業につながるQCの見直しを求める声が出ていた。

 トヨタはこれまでQCを自主的活動とみなし、これを支える目的で月2時間に限り残業と認めてきたが、判決を受けて国とも見直しについて協議。今後はすべて業務と扱い、残業代の上限を撤廃して全額支払う方式に改める。

 トヨタには国内だけで約5000のQCサークルがあり、残業代の全額支給によって労務コストが増大する可能性もある。

 トヨタのQCは職場の無駄をなくすカイゼン運動の原動力で、生産性の向上を支えてきた。しかし、最近は資料作成や発表の練習など、業務と関連の薄い部分に時間を割くことが増えているという。

 このため、トヨタはQCを業務と認めた上で「活動を簡素化し、カイゼンを目的とした本来の姿に戻したい」(幹部)と、QCの見直しを進める方針。

 日本の製造業はQCを幅広く取り入れており、トヨタの決定は他社にも影響を与えそうだ。非製造業でも、日本マクドナルドが店長に残業代を支払うことを決めるなど、残業の取り扱いが注目を集めている。

 【QC(品質管理)サークル活動】 英語「Quality Control」の略で、製品の品質向上や工程の効率化などの改善策を話し合う職場ごとの自主的なグループ活動。トヨタ自動車は1961年に導入、強みとする「カイゼン」活動で中心的な役割を担ってきた。トヨタの工場で急死した元従業員の男性を「過労死」と認定した名古屋地裁の判決(2007年11月)は、QC活動を「業務」と判断した。

 (中日新聞