不払い問題、生保10社に改善命令へ 金融庁が週内にも

 金融庁は日本、第一、明治安田、住友など生命保険10社に対し、保険金の不払い問題で業務改善命令を週内にも発動する方向で最終調整に入った。会社側の調査内容や再発防止策を精査した結果、顧客対応がなお不十分と判断した。10社には継続的な監視の下で業務改善を求めるほか、不払いを巡る情報開示の拡充を促し、顧客保護の徹底を図る。

 業務改善命令を出すのは大手4社のほか、大同、富国、三井、朝日の国内計8社と、アメリカンファミリー、アリコジャパン外資系生保2社。10社を一斉に処分する異例の措置となる。今回の処分は2005年2月の明治安田の業務停止命令から3年半にわたる生保の保険金不払い問題に一定の区切りを付ける意味合いもある。(07:00)

牛トレサビ法の盲点ついた、飛騨牛「丸明」の裏切り
商売の「信義」はどこへ行った

藤原 文隆(2008-07-02 11:45)

 私が飼育している牛の耳には、「耳標」というプラスチック製の札が装着され、そこには、10桁(けた)の数字が記されている。

 これは牛個体を特定するための番号で、「個体識別番号」と呼ばれている。国内のすべての牛に振り分けられたこの番号は、農水省傘下の(独)畜産改良センターの手で、一元管理されている。

両方の耳に装着されている耳標(撮影:藤原文隆)

 これは2003年、牛海綿状脳症(BSE)の発生を教訓に制度化されたもので、通称、牛トレサビ法(トレーサビリティ法)という。

 BSE発症の場合を想定し、感染した牛の生まれた農場や飼育された農場を、迅速に特定するためだ。これによって、BSEの蔓延(まんえん)を最小限に抑えることはもちろんのこと、インターネット経由で、日本の飼育されているすべての牛の生育履歴を提供できるようになった。

 この牛トレサビ法は、牛が生まれた時からスタートする。

 生まれた牛は個体識別番号とともに、畜産改良センターへ報告される。このデータベースには、その牛の出生年月日や別、種別、母牛の同番号などの情報も登録されることになる。

 牛は生まれた農場などで一生を終えるわけではない。生育途中で異動する場合もある。当然、異動日や、異動先などの情報も畜産改良センターに報告する義務が課されている。

 つまりデータベースには、その牛の誕生から屠殺(とさつ)までのすべての転入・転出記録が網羅されることになる。

 この法律によって、牛を飼育する農家・農場には、従来に増して牛の生育管理面での安全性や衛生性が求められことになった。万が一にも牛や牛肉に問題が生じようなものなら、瞬時に管理者が特定され、その後の経営に重大なリスクを負うことになったのは言うまでもない。

 このように、牛の「生産」情報は、出生から屠殺までの間は個体識別番号によって捕捉されている。それはいい。では、屠殺以降の枝肉の「流通」段階で、品質はどのよう担保されるのであろうか。

 岐阜県の食肉販売会社・丸明で、ブランド牛「飛騨牛」の偽装表示が発覚した。同社は農水省の検査を受けている。

 飛騨牛とは、全国に名高い岐阜県のブランド牛であり、枝肉のなかで、上位等級格付けの県内牛にだけに与えられる称号だ。報道によると、丸明の場合、下位等級の枝肉も「飛騨牛」として表示、販売した。(注:枝肉=頭部・内臓・尾・肢端を取り除いた部分の骨付きの肉)

 ここでクローズアップされるのが「耳票」個体識別番号だ。

 牛の耳に装着された耳標の個体識別番号は、その牛が生きているうちは、その牛を特定する証拠になる。しかし、食肉屠場で屠殺された時点からは、牛個体ではなく、枝肉として管理され、牛に付けられた番号は枝肉に引き継がれ、食肉卸売業者、小売店、特定料理提供者(たとえば焼肉店など)へと転売されるつど、その個体識別番号を表示し、取引の記録とその保存を帳簿で管理することに変わっていく。

 ところが、屠殺され牛肉となった商品に表示された個体識別番号は、その牛を特定する証拠にはなり得ない。

 というのは、いくら、消費者が飛騨牛と表示されている牛肉の個体識番号をインターネットで検索しても、その牛が飛騨牛であるかどうかや、その番号の牛であるということは分からないからだ。残念ながら現状のシステムでは、小売りなどの段階で不正が起こる危険性がどうしても残っている。丸明の飛騨牛偽装事件は、その盲点を突いたといえよう。

 偽装防止のため、農水省は屠殺された全枝肉のサンプルをあらかじめ保管し、小売店などで不定期に抜き打ち検査した肉と照合させるシステムをとっている。抜き打ちした検査した牛肉のDNAと、屠殺段階で保管していたサンプルのDNAが一致すれば、不正はないことが証明される。しかし、実際には抜き打ち検査の頻度があまりに少ない。この抜き打ち検査の少なさが、この事件を誘発させた背景にある。

 飛騨牛のブランドは、生産者と流通業者の両方の努力によって全国区になった。同じ畜産農家としては、ここに至るまでの飛騨牛生産者の努力が理解できるだけに、信義を破った丸明の所業は許しがたい。

 その意味で、再発防止のための制度改善はもちろん必要だ。しかし、それ以上に商行為における、古くて新しい鉄則「信義」が問われるのはいうまでもない。

【社会】
パワハラ認定、賠償命令 社員自殺 松山地裁判決 ノルマで執拗に叱責

2008年7月2日 朝刊

 道路舗装大手「前田道路」(東京)の社員だった岩崎洋さん=当時(43)=がうつ病で自殺したのはパワーハラスメントパワハラ)が原因だとして、遺族が同社に慰謝料など約一億四千五百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地裁は一日、自殺との因果関係を認め約三千百万円の賠償を命じた。高橋正裁判長は、上司による過剰なノルマ達成の強要や度重なる叱責(しっせき)は「違法と評価せざるを得ない」と指摘。「自殺は予見可能だった」として会社の責任を認めた。

 パワハラによる自殺をめぐっては昨年、医薬品販売会社員の自殺を労災と認定した東京地裁判決が確定。遺族の弁護士によると、損害賠償を命じた判決は珍しいという。

 判決によると、岩崎さんは二〇〇三年四月に東予営業所(愛媛県西条市)所長に就任。架空出来高の計上などの不正経理をし、発覚した。上司らは是正のため過剰なノルマ達成を強要、「会社を辞めても楽にはならない」などと何度もしかった。岩崎さんはうつ病を発症し〇四年九月、営業所敷地内で首つり自殺した。判決は、不正経理が上司の〓責のきっかけだとして岩崎さん側に六割の過失があるとし、賠償額を算定した。

 同県新居浜市新居浜労働基準監督署は〇五年十月、岩崎さんの自殺を労災と認定した。

 妻の洋子さん(46)は「過失相殺の割合が納得できない」として控訴する方針。
予防面で意義深い

 遺族側代理人の水野幹男弁護士の話 目標を立てて管理する手法をとる会社が多い中、目標を達成できない社員の責任を上司が執拗に追及して自殺者が出るケースもある。業務に起因する自殺を予防する見地から意義深い判決だ。
直ちに控訴する

 前田道路の話 詳細の確認ができていないが、当社の主張が認められず残念。直ちに控訴する予定だ。

PL法の見直し必要
輸入品事故多発
被害救済を論議

 全国消費者団体連絡会は一日午後、東京都千代田区で「輸入品の製造物責任―ギョーザからエレベーターまで―」と題してPLオンブズ会議二〇〇八年度報告会を開き、七十人余が参加しました。輸入製品による事故にともなう被害救済のあり方やPL(製造物責任)法の見直しについて論議しました。

 PL法は一九九五年に施行され、十四年目をむかえています。最近でも、中国産ギョーザの農薬混入やシンドラー社エレベーターによる高校生死亡事件など、輸入製品による事件・事故が続いています。

 報告会では、消費者からみた輸入品の事故についてのアンケート調査結果をPLオンブズ会議の土田あつ子さんが報告。

 日本生活協同組合連合会の組織推進本部の山内明子本部長は中国産ギョーザ事件を例にとり、輸入品の製造物責任について報告しました。個人輸入をめぐるトラブルとPL法との関係についても話しました。

 意見交流では「シンドラー社のエレベーター事件に関心がある。ドアがあいたまま動き出すこと自体が問題で、ヨーロッパではどういう安全基準になっているのか」などの質問が出されました。

 中村雅人弁護士がPL法改定にかんし、「現行の製造物責任法は対象を狭く定めている。広く農産物などを含めて対象にし、被害救済に有効な法律に改定すべきだ」とのべました。

 PL法 製造物責任法のこと。PLはProduct Liabilityの略。製品の欠陥によって発生した被害・損害について、企業側の過失を証明しなくても、賠償請求できることを目的に定めた法律。一九九五年七月に施行されました。