食品:「もち吉」の菓子から殺虫剤 基準の7000倍 14万個回収へ/人為的混入の可能性

会見を終えて頭を下げる「もち吉」の宮越博昭常務(中央)ら=福岡県直方市で2008年11月17日午後7時35分、上入来尚撮影

 福岡県は17日、同県直方市の米菓会社「もち吉」が製造・販売している和菓子「えん餅」から、最高で基準の7000倍の殺虫剤「フェニトロチオン」(商品名・スミチオン)が検出されたと発表した。同日までに健康被害の報告はないという。県はもち吉に製品回収を指示するとともに、濃度の高さから「原材料に由来したとは考えにくい」とみて、県警とも連携して故意と過失の両面で調査する。

 フェニトロチオン有機リン系の殺虫剤で、農薬のほか、側溝の害虫駆除などに幅広く使われている。

 県保健衛生課によると、10月30日に横浜市、11月13日に大阪市の消費者から「ナフタリンのようなにおいと苦みを感じた」と苦情があった。県はもち吉に製造状況の自主検査を指示する一方、県独自の検査も実施。双方の検査で、10月29日に製造された「えん餅」のあんから70〜1・1ppmのフェニトロチオンを検出した。70ppmは食品衛生法に定める基準値(0・01ppm)の7000倍にあたる。

 同日製造された「えん餅」は7114個。6000個は工場で保管されているが、298個が通信販売で、816個は全国34都道府県の百貨店などで販売されたとみられる。

 同じあんは、10月28日〜11月2日の製造分に含まれている恐れがあり、県は29日製造分を含む計14万5128個の自主回収を指示した。もち吉は15日に「えん餅」の生産を停止し、回収を始めた。回収対象のうち約3万7000個は回収できたか出荷を取りやめたとしている。

 食品安全委員会の基準によると、フェニトロチオンは体重60キロの人の場合、1日に0・3ミリグラム以上を長期間摂すると、健康被害が生じる恐れがあるという。70ppmの「えん餅」は10分の1個で0・3ミリグラムに達する高濃度だが、県は「1個食べてもただちに中毒を起こす可能性は低い」としている。

 もち吉は着払いで対象商品の回収をしている。問い合わせは同社お客様相談室(0120・82・4567、平日9〜17時)。【尾中香尚里、入江直樹】

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 なぜ、高濃度の殺虫剤が混入したのか−−。福岡県直方市の米菓会社「もち吉」が製造販売している和菓子「えん餅」から大量の殺虫剤「フェニトロチオン」成分が検出された問題で、同社グループ役員が17日、本社で会見した。混入の原因は「調査中」としつつも、これだけの量が元々の原料に含まれていたとは考えられず、人為的な可能性もあるとして、県警直方署に相談したことを明らかにした。

 会見冒頭で宮越博昭常務取締役は「食品を製造する会社として、あってはならない事態。二度と不祥事が起きないよう管理体制を整備する」と陳謝した。

 会見によると、えん餅は同じ敷地内にあるグループ会社「森田あられ」が専用工場で作っており、従業員約20人が製造に関与している。殺虫剤成分が検出された小倉あんの原料について、同社は「北海道産の小豆」と明言した。製あん後は3〜4日間冷蔵庫で寝かし、焼成したらその日のうちに商品にするという。

 問題となった10月29日の分の製あんには、3人の従業員が携わった。抜き取りの実食検査は毎日行っており、この日の商品で異臭などはなかったとしている。さらに、殺虫剤成分が検出された商品でも、包装紙などに不審な穴などは確認されていないという。

 当該工場の清掃は従業員が担当し、工場内にはフェニトロチオン成分が入った殺虫剤などは置かれてない。ただ、敷地内にある別の工場では、外部の清掃業者が月2回、同成分の入った製品で殺菌消毒などをしていたという。

 また、社内外でのトラブルなどはないとしている。会見した役員らは質問に「調査中」を繰り返し、困惑の色を隠せなかった。

 同社は今月15日に対策本部を発足させ、従業員から事情を聴くなど内部調査をしている。工場は現在、生産ラインを止め、そのままの状態で保存している。【入江直樹】

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 もち吉はせんべいやあられ、だんごなどの米菓子を中心とした菓子販売の地場大手。関係会社の森田あられ(直方市、1965年創業)の販売会社として83年、同社創業者の森田長吉氏(70)が設立した。全国に181店(2月末現在)を展開し、東京商工リサーチ北九州支店によると、08年2月期の売上高は159億1008万円、経常利益は3億1329万円。

2008年11月18日

「自殺した従業員が混入」 殺虫剤問題でもち吉会見
2008.11.20 20:06
このニュースのトピックス:自殺

 福岡県直方市の米菓メーカー「もち吉」が販売した和菓子「えん餅」から高濃度の殺虫剤フェニトロチオンが検出された問題で、同社の40代の男性従業員が混入への関与を示唆する謝罪文を送り自殺したのを受け、同社の宮越博昭常務は20日、記者会見を開き「状況からこの従業員が混入したと考えている」との見方を明らかにした。

 県警はもち吉から謝罪文の提出を受け、詳しい経緯を調べる。

 もち吉によると、ファクスで19日に届いた謝罪文は手書きで「ここまで異臭騒ぎが大きくなるとは思わなかった。殺意は全くなかった。申し訳ありません」とし、職場の人間関係に悩んでいた様子が記されていた。

もち吉従業員、混入告白し自殺 FAX謝罪文を公開2008年11月21日 09:56更新 前の記事 次の記事  一般・事故一覧

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 福岡県直方市の米菓メーカー「もち吉」が販売した和菓子「えん餅」から高濃度の殺虫剤フェニトロチオンが検出された問題で、同社は20日、記者会見を開き、40歳代の男性従業員が自殺前に同社宛てに送ったとみられるファクスの内容を明らかにした。

 19日午前6時ごろ同社にファックスで届いた謝罪文には手書きで、「ここまで異臭騒ぎが大きくなるとは思わなかった。殺意は全くなかった。結果の重大さをしみじみ感じている」などと書かれていた。

 文書が届いた同日、従業員は欠勤したため、同社は警察に通報。その後、男性の捜索にあたった県警は同日午前、同県飯塚市内の山中で首をつっている男性の遺体を発見した。遺体のそばに置かれた遺書からも、容疑を認める記述が確認されている。

 また、謝罪文には「コミュニケーション不足で居場所がないと思うようになった」とも書かれてあり、県警は、仕事や職場に関する悩みや不満から、えん餅のあんに殺虫剤を混入したとみて、容疑者死亡のまま偽計業務妨害の疑いで男性を書類送検する方針。

 同社は15日にえん餅の生産を停止し、製造再開のめどは立っていないという。
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/081121/24176.html

殺虫剤混入:「もち吉」40代従業員が告白し自殺

 福岡県直方市の米菓会社「もち吉」が製造・販売した和菓子「えん餅」から高濃度の殺虫剤成分「フェニトロチオン」が検出された問題で、同社は20日、えん餅製造に携わっていた40代の男性社員が19日に自殺したと発表した。社員は「殺意はなかった。ここまで異臭騒ぎが大きくなるとは思わなかった」などと混入を認める内容の手書きの文書を会社にファクスしており、県警は社員の関与について慎重に捜査を続ける。

 もち吉によると、19日午前6時ごろ、会社に社員の自筆で「結果の重大さを身にしみて感じている。自ら望んだ配置転換で居場所がないとおかしくなった。(上司に対し)ご指導ありがとうございました。未熟でした」などと記した、押印入りのファクスが届いた。

 通報を受けた県警が捜索したところ、同日午前、福岡県飯塚市の山中で首をつって死んでいるのが見つかった。遺書もあったという。

 会社側が履歴書とファクスを照合したところ、双方の文字は酷似していた。社員は02年ごろ期間従業員として採用され、当初は発売を始めたばかりのえん餅の包装を担当。4、5年前、正社員に登用された後はえん餅のあん製造を希望し、06年1月から従事している。性格は温厚で、欠勤もなかったという。

 ファクスにある「居場所がない」との点について、同社は「周囲との関係がうまくいっていないなどの報告はなかった」と説明。混入によりえん餅製造を休止した今月15日から自殺する前日の18日まで、他の従業員と工場内の清掃などをし、不審な点はなかったという。社員に対しては、社内調査のヒアリングも予定されていた。

【入江直樹】